クレオパトラの夢

あらすじ

寒さが嫌いな神原恵弥(かんばらめぐみ・男)は、
家族の要望により、双子の妹を連れ戻すべく北国の極寒の地へと降り立った。

恵弥は、世界を股にかける製薬会社の研究員だ。
40歳になるにもかかわらず、各国を転々とし、同世代よりもかなり多い収入を得る彼は、見目がいいにもかかわらず、ドギツイオネエ言葉をしゃべる。

「あら、ちょっと、和見(かずみ)、あんたんちってどこ?このクソ寒い中を、まさかまだまだ歩くんじゃないでしょうね?」
というわけだ。

彼がこの北国に降り立った理由は、もう一つあった。
妹・和見が婚約破棄し、別の男のもとへと走った。和見が恋に落ちた相手は、妻子持ちの大学の先生。
その先生が死んだ。
クレオパトラ」を調べ続けていたその先生の死の意味は?
寒さ嫌いの恵弥が極寒の地へきたもう一つの理由もそこにあった。

離婚を嫌がる妻、その夫、追いかけて引っ越してきた不倫相手の三角関係の真相は?


本当の関係が妻の口から話されたときは少しぞくっとした。
とにかく面白い。
まず恵弥(めぐみ・男)のオカマキャラを読んで思い出したのが、恩田陸作品「MAZE」だ。
後からアマゾンを見たらなんと「MAZE」の続編だった。
なるほどー。
随分昔に読んだから、名前は覚えてなかったけど、登場人物の1人のオカマキャラが妙に好きだったのを思い出した。恵弥だった。

規制の多い医薬品業界の夢物語。
ずっと昔から偏狭の地で秘密裏に続いてきた〇〇に関する伝説物語。
真相はちょっと怖いけど、無さそうで本当に有りそうな結末が待っている。

最初は主人公にもかかわらず、恵弥が謎の人物のようで得体が知れない描写が続く。
謎が多い。
目的が分からない。

だけど、妹の和見が失踪してからは攻守逆転。
妹の思考が読めない。
最初はむしろ和見の気持ちのほうがわかったのに、後からは和見が深い謎を抱えている。
破天荒なキャラである恵弥のほうに心情に共感しだすから不思議だ。

最後には、ああ双子なんだな、と思った。
特にストーリー的に双子にする必要性があまり感じられなかったけど、なんとなく最後にはそう思えた。(特に重要なところでもないけど)

この話は2つ以上の違う方向を向くベクトルがある。
それぞれの真相を求めて、進んでいく。
けど、それが上手いこと交わるから恩田テクニックなんだろう。

「MAZE」のテイストも嫌いじゃなかったけど、この「クレオパトラの夢」のほうが私は好きだ。
北国のある地域という狭い地域に、世界を揺るがす、専門家が密かに注目するある疑惑が…。という設定が私の好奇心を刺激するようだ。

お試しあれ!