黒と茶の幻想

黒と茶の幻想 恩田陸

「美しい謎」という言葉に惹かれて購入。
もう10年前のことになるが。

当時から謎に惹かれてミステリー小説を購入していたので、この帯だけで迷わず購入した。
内容は、中年の男女4人が旅を通じて自分たちのまわりに存在する謎を安楽椅子探偵よろしく推理していこうというものだ。
この4人の関係は、同じ大学、おそらく偏差値の高い大学の仲間たち。
見目美しい金持ちのご子息毒舌男と、しょうゆ顔の物静かにみんなを観察するクールな男と、小柄で美人だがさばさばした性格で同期の中でいち早く管理職に抜擢された女、そしてかつてしょうゆ顔のクールな男と交際していた落ちついている女。
この4人が中年になった今、久しぶりにみんなで飲みに行き、そこで南の島に旅行に行こうという話になった。
その道中大学時代にあった問題や、自分でも理解できないトラウマ、近所の話、友人の死の真相、ある少女の話などを繰り広げ、考え、答えを導いていく。
その中でも私のお気に入りが、前半に出てくる最初の謎。
毒舌男は裕福な家庭だったが、家庭不和でよく親戚のおじいさん夫婦の家に逃げていた。そこで必ず毎朝起こる2回の地震の話が興味深い。
毎朝2つの漬物石を儀式のように庭に落とすおばあさん。
その真相は、、、結局本当のことはわからないのだけど導かれた推理にはぞっとさせられるが有得る内容が含まれていた。
たぶんそうなんだろう。と思わされた。
短い推理時間の中に4人の会話がたくみに配置され、推理も大の大人が真剣にそんなことを考える、なんていう面白さ。
しかも日常ではなくて、非日常とも言える大自然の中での推理ショー。
他にも、同性愛的なものがちらりちらりと見えていたが、重要なキーポイントになっていた。
読んで損は無い作品。
長編だが、4人の登場人物の名前の題名付で節が分かれ視点も変わるので、それを機にに休憩もできるから心配なく。
私は長編など時間があれば一気読みしたい派なのだが、今回は少しずつ読み進めることができた。

長編好きで、謎が好きな人には面白い作品になる。