砂漠

砂漠     伊坂幸太郎

新年明けて初めて読む作品だった。
内容を知らずして買ったのに、「前進する力」を感じる新年に相応しい門出の作品を読んでしまった。

仙台の国立大学に通う学生5人の話。
伊坂さんは東北大学だったから、当時を思い出しての執筆だったんじゃないかな。

麻雀、コンパ、合コン、講義、論文、ちょっとした冒険など。

砂漠という名の社会にでる前の学生たちが、砂漠で前進する為に今を生きる。
極端な思考を饒舌に語る「変わった男」西嶋。
髪の毛が上や後ろに伸びてるお気楽ボンボンの鳥井。
周りを傍観するクールな鳥瞰型の男、北村。
笑わない、愛想がない、だけど神秘的な美しさを持つ女性、東堂。
小物を動かしたりする超能力を持っているけど、「ごめんね、胡散臭いよね」と普通な南ちゃん。
鳥井を除く4人の名前には「東南北西」が入っている。
キワモノ西嶋の提案で、「中国語と確立の勉強をしよう!」とクールな北村は誘われその名前がきっかけで4人は麻雀をするようになる。
(鳥井はもともと麻雀メンバーだった)

穏やかな文章で、時間はゆったりと流れる学生時間。
入学から卒業までを描く。
伏線はいくつも明らかに書かれており、それが楽しい。
これかな?これかな?さっきの伏線はこれのため?
というような自分も参加している気分になってくる。

題名の「砂漠」から思いも寄らぬ話で、私の頭の中の辞書の「砂漠」のイメージが深く濃くなった。

大学生生活が自分の人生で一番楽しい時間だった、と幾度となく思い返していたけど、それはしちゃいけないんだな、とも最後に思えた。
前に前進する。
砂漠を。

良い本を読んだ!