終末のフール
終末のフール 伊坂幸太郎
8篇の物語。
登場人物は、仙台にあるヒルズダウンというマンションの住人たち。
そして世界は終末。
小惑星が地球に衝突し、世界は終わるカウントダウンが始まり混乱。
その混乱が多少収まってきているときの話たち。
1つ1つが短編とは思えないほど、読み応えがある。
内容が濃い!
意図せずして、今年最後に読む本が終末の本になってしまった。
でも今年最後の、読書日記としてはいい締めくくりになったように思う。
終末になると、なんでもありになる。
将来への蓄えもいらないから、みんな働くことを止める。
食物の奪い合い。
噂話の「箱舟」「シェルター」乗船券。
世界中の人間の余命が3年となった時、みんなが混乱したり発狂したりすることは有り得ることだ。
そんな中でも以前と変わらずボクシングに励む少年、平和に暮らしている家族や、一家心中を考える家族、残された家族、等いろいろな人が登場する。
いろいろな終末の過ごし方が存在する。
自分はどう過ごすだろうか。
私の涙腺を直撃するようなシーンもあって、思わず涙がこみ上げてきた時もあった。
ビデオを10年も延滞している男のもとへ、ビデオ屋の店長が督促に行く話しだった。「深海のポール」。
警察官だった父が、終末の不安で逆恨みした人たちによって殺されるシーン。引きこもりから抜け出したばかりの息子は、怖くて2階に逃げた。1階に父を残して。
スキー板を武器に戦う父は叫ぶ。
「出てくるな、こっちは大丈夫だ」
「がんばって、とにかく、生きろ」
息子は怖くて立つことすらできずに、2階でじっとしていた。
静かになった1階に下りていくと、胸に包丁が刺さって仰向けに寝ている父がいた。
今年最後の涙はこの本を読んで流したよ。
ページ数よりも内容が詰まってて、読むのにいつもより時間かかってしまった。