99%の誘拐

99%の誘拐  岡嶋二人

この作品はどこまでも私好みの作品で、私はこの作品が存在すること自体に文学の素晴らしささえも感じてしまうほどだ。

物語の冒頭は、病に侵され死期を間近に控えた最先端の技術者の手記だ。そこには、息子が誘拐されたときのことが詳細に書かれていた。息子に向けた熱いメッセージが書かれていた。しかし、その手記は彼が亡くなった後、長い間息子に読まれることはなく、妻の手のもとに仕舞われていた。成人し大人になった息子は、ある男の水死事故をきっかけに、手記を読み、自分の誘拐事件の真相を知ることになる。そこから始まるのは、息を呑むスピードで繰り出されるハイテク完全犯罪だ。綿密でかつ繊細なこの犯罪準備から驚嘆。99%は誘拐になるが、1%でこれは誘拐したとは言えない部分がこのハイテク犯罪の醍醐味だ、と勝手に自分でそう考えているだけだけれども。



ネタバレ


最後がまたいい。
犯罪は罰せられるべきだとは思うが、こういう終わり方は新鮮だったと同時になぜかロマンチックな気がした。この感情は自分でもよく分からないけど、犯人は捕まるか、自殺するか、殺されるか、時候になるかのどれかしか読んだことがなかったから…犯罪を犯してもつかまらずのうのうと自分のトリックを、昔自分が誘拐した少年と、船上のデッキで夕日を背に語るだなんて。
この作品は、私に大きな影響を、感動を、そして衝撃を与えた。