魔球

魔球  東野圭吾

野球、甲子園、といった言葉から連想できない内容に まず驚かされる。天才須田と呼ばれた彼の真の才能は、 凄まじい精神力と実行力にある。

高校野球の爽やかさは初めの数ページのみで、あとは悲しい事件とその背景を読み解く長い旅にでるような気持になる。
何度も読み返してしまうのが「約束」の章。
原点がここにある。このときの両者の心情はどちらも重い。

墓地でのやり取りに胸が痛くなる。心に残る作品だった。

天才須田の中にある「約束」に対する不信感と過剰なまでのトラウマを生んだ生い立ちを想像して、苦しくなる。

東野さんの作品の中で比較的目立っていないように思うが、隠れた名作といえる。

この本は一生手放すつもりはない。