天空の蜂

天空の蜂  東野圭吾

この事件の規模とその意味を深く考えさせられる。普段日常生活で当たり前に使っている(今もまさに使っている)パソコンの電気や暖房冷房、蛍光灯の電力がどこからきているのか。それはもちろんどこかでその電力を作っているから。そのどこか、や、どうやって、に目を向けたことが今まであっただろうか。自分はその具体的なことについて想像したこともなかった。原発のある地域の不安や苦労、そして危険地域での掃除や作業。
事件とは、巨大ヘリを盗み、原発の上空でホバリングさせ、日本政府に国内すべての原発を使用不可状態にすることだった。すべては綿密に考えつくされた計画だったが、子供が過ってヘリに乗り込んでしまうという誤算が生じた。2人の事件の犯人はそれぞれ違う思いを胸にこの事件を起こした。その思いが垣間見えるエピソードがこの事件の意味。しかし、謎も残したままだ。1人の詳細な理由は読者に分かるようになっているけれど、もう一人の理由は読者が想像するしかない。その想像が正しいのかどうかも確かめる術がない。
この本を読んでいて、細かい機械類やヘリや原発の仕組みが書かれているが、その一部しか理解できなかった。はじめは理解しようと真剣に読んでいたけれど、途中から長編ということもあるけど、機械や原理、仕組みの説明になると流し読みしてしまうこともあった。全部理解できたらもっと楽しめただろうに、自分でもそれを理解するだけの知識がなかったことが本当に残念だった。