仮面山荘殺人事件

仮面山荘殺人事件  東野圭吾

騙す、ということが一つのテーマになっている。
この本は最初から最後まで騙している。
メタとはまた一つ違うもので読者は騙された、という気がする。それは読んでみないと分からないけれど、この本のテーマは「騙す」だと思う。

自動車事故がきっかけで知り合った男女が恋に落ち、結婚するための準備をしている途中で女性が自動車事故で死んでしまうというところから始まる。
バレエの才能があり、スポーツカーをがんがん飛ばすようなお嬢様が、その事故で足を失ってしまう。非はなくとも事故の相手として主人公は見舞いに行くと、ちょうど自殺しているところだった、という。それから病室へ通うようになり、仲はどんどん進展していった。
二人はいつしか結婚を誓い、結婚に向かって準備をし始めていた。
事故で彼女を失った後も、彼女の家族と仲良くしていた主人公は、彼女の父が所有する別荘へと招待される。そこで、突然銀行強盗が忍び込み別荘にいたものたちを監禁する。恐怖の中では、強盗が面白半分にご令嬢の自動車事故のことを話し合わせる。そこで各々が不審に思っていた点を挙げ、事故が殺人ではないかどうか話し合いをする…。
そんな流れで物語は進められていく。
この本は真相を知ってから、もう一度読み直してみると、なるほど…こういった伏線の張り方がされていたのか、と納得もする反面、最後のあの主人公になりきってしまった自分が受ける気まずさと焦りが心臓に良くない…。
東野圭吾さんの作品の中では、少しテイストが違うものかもしれない。新しい視点に挑戦したものだろう、と思う。


ネタバレ

これを読んで思ったのが、岡嶋二人さんの「そして扉は閉ざされた」の進化系だな、ということ。似ている。もちろん大仕掛けがされていて、それが一味違うけれど、岡嶋二人さんの作品を読まずしてこの作品がかけたとは思わない。(…とか言って東野さんなら書ける可能性あるけれど)ちょっと後味が好きじゃないという点では私はあまり好きな作品ではない。
別に、どろどろ終わるわけではなく、むしろあっさりと終わるテイストなんだけれど、最後の終わりかたと同様、荷物は玄関にあるから、と言ってポイッと外に投げ出される感じ。
これが好きな人にはたまらないだろう。