秘密

秘密  東野圭吾

始まりは突然の悲劇。
妻と娘がバス事故に遭う。そして妻は娘を最後まで庇い、死んだ。娘は妻のおかげで何とか一命を取り留め病院で目を覚ました。
しかし、そこで信じられない事が起きる。

目が覚めた娘は、自分が妻だと言うのだ。

はじめは信じられなかった主人公も、娘が知らないはずの過去の思い出を知っていることなどで、娘の中に妻の意識があることを信じるようになった。そこから二人の奇妙な生活が始まる。
主人公は妻を失った被害者、バス事故の被害者の会の一員になり、どうして事故は起きたのかや賠償金について話し合いをしたりする。日常で妻はいるのに、周りでは妻を失った夫として見られている。そして妻は身体は娘だから、学校にいかなくちゃいけなかったり、小学生の交友関係を覚えたりと大変。
二人の心配は、娘の意識はどうなったのか、ということ。
妻は、娘が意識を取り戻したときのために、必死で勉強する。
いい環境に置いてあげたくて。

娘の身体は当然成長していく。
次第に妻の行動に対して敏感に反応していく主人公。
少しストーカーのようなことをしたり。
でもその心配は、夫婦だったらしょうがないことのようにも思う。男だったら、自分の妻がたとえば高校生でボーイフレンドから電話が家にかかって来たら気が気じゃない。気になって気になってしょうがない。
主人公の視点でこの本を読み進めるのと、妻の視点で読み進めるのとではこの本に対する印象がガラリと変わる。
最後は、どちらにとっても苦渋の決断としかいいようがない。
この「秘密」というタイトルの真意(深意)が最後に分かる。
全部読み終わってから、表紙をもう一度よく見てみると少しだけおちゃ目な仕掛けがしてあることに気づくだろう。