パワー・オフ

パワー・オフ   井上夢人


コンピューター内で生きるウィルスの脅威。人工生命体。
われわれ人間と同じように、遺伝子を持ち、子供を作り、自然淘汰されより進化していくプログラム。
電子の中で増殖し生きているそのプログラムの中に、コンピューターウィルスが加わったとき、それは世界が震撼する恐ろしいウィルスへと進化した。止められない。
すぺての始まりは「お気の毒さま このシステムは コンピューター・ウィルスに 感染しています」という画面で、数秒間フリーズするだけの何のファイルも壊さない比較的無害のウィルスから始まる。それを作ったのはソフトウェア会社に入ったばかりの新卒。
彼がそのウィルスを作ったのには理由があった。作りたくて作ったわけではなかった。
そのウィルスのせいで高校生が手のひらにドリルで穴を開けるという事故もおき、ウィルスの作者はただただ怯えていた。
また別のところで、天才と謳われたネットワーカーとある会社が共同で新開発をしていた。それはA−LIFEと名づけられた人工生命体。
生きようとする生命体の本能を持ったプログラムはさまざまな変化と突然変異を繰り返し、世に広がっていく。
一家に一台、もしくはそれ以上普及しているパソコンが、人工生命体にのっとられたらどうするのか。生きる道は2つ。
根絶するまで戦うか、共存するか。
実際に起こったら私たちはどちらの道を選ぶのだろうか。
ハイバーミステリーと称されるこの作品は、限りなくSFに近いが、あくまで「近い」だけでSFではないように思う・・・その理由は現実的(リアル)だから。