聖女の救済

聖女の救済  東野圭吾

天才科学者・湯川教授のシリーズ。
今回は草薙さんの恋。
殺人なのに、救済。
救済し続け、救済するのを止めた時、事件は起きる。
こんなトリックはちょっとやそっとじゃ思いつかない。東野さんは男なのに、女性の気持ちがよく分かってる。
女は直感。
感性で動く生き物だけど、そこには複雑に絡み合った感情があって、時に男には理解できなに言動をする。
奥が深く、本当に完全犯罪になり得るトリックだった。それを阻んだのが皮肉にも草薙さんの恋心。
草薙さんの切ない気持ちは、特筆はされていないけど、痛いほど伝わってくるような描写が多かった。
一つだけネタバレをすると、机にしまっていたというあの証拠物。
草薙さんが、洗わずに、大切に、仕舞っておいたあのごみともいうようなもの。
終盤になってやっと挙ってくる高度な科学技術により検出される物的証拠というピースが急速に真相を作り上げていく。逆に最後まで読まないとトリックと殺人の動機の真相が見えて来ないところが流石。
正直、こんな女性がいたら怖いだろう。
執念深く、恐ろしい計画を練り、さらにそれを実行するだけの用意周到さがある。
でも、なぜか惹かれる。
彼女の持つ強さ。
あと、文章から浮き上がる人物像。
魅力的なのだ。

そしていつもながら、タイトルの持つ意味も、全貌を知って、やっと意味を持つ。
天晴れの一言だ。
彼のタイトルのネーミングセンスは大胆で、一度提示されると、もうこのタイトル以外は考えられないというくらいに必然性を感じさせられる。
「悪意」の時もそうだった。
「秘密」の時もだ。
「魔球」もそうだ。
「宿命」も。
「赤い指」も。
どれも端的に物語を表している。
すべてがそうだ。

東野さんの本は、読む前と読んだ後ではタイトルの持つ魅力が倍増するから、好きだ。